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2026-08-26 · ブログ

雇用契約書テンプレート2026 — 試用期間・競業避止の書き方

要点: 雇用契約書は、労働基準法上、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが前提となります。テンプレートを流用する前に、明示が義務の事項の網羅、試用期間と競業避止条項の合理性、年俸制・副業条項の実態との一致という三点を確認することが最小限の作業です。

「雇用契約書 テンプレート」で検索する場面は、新規採用の準備、パート・アルバイトの登用、幹部社員の採用などさまざまですが、共通する問いは一つです。どこまで書けば足りていて、どこからが書きすぎなのか。この記事では、法令上押さえるべき点と、条項として揉めやすい点を分けて整理します。

明示が義務の労働条件(絶対的記載事項)

労働基準法15条は、労働契約の締結に際して賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを求めています。このうち賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払時期、労働時間関係(始業・終業時刻、休憩時間、交代制の場合の就労転換)などは、必ず書面で明示する事項とされています(労働基準法施行規則)。退職手当や昇給のように、制度として存在する場合に明示が必要な事項もあります。

記載事項位置づけ書くときのポイント
賃金(基本給・手当・締切支払日)必ず明示固定残業代を含める場合はその区分と基礎額も明示
労働時間(始業・終業・休憩)必ず明示変形労働時間制を使うならその枠組みも併記
退職手当・昇給等制度があれば明示制度の有無そのものを明確に
契約期間・更新期間の定めがある場合更新の有無と判断基準を明記
試用期間実務上ほぼ必須期間と本採用の関係を明記

固定残業代制を採る場合、残業代部分とそれ以外の賃金を区分して明示することが求められる点は、テンプレート流用時の典型的な落とし穴です。「残業代込み」という一行だけでは足りません。

試用期間の書き方と妥当性

試用期間は、労働者の適性を見極めるための制度として広く使われています。労働基準法上、採用の日から14日間については一部の解雇制限規定の適用がない一方、それ以降の試用期間中の解雇は、通常の解雇に近い水準で厳しく判断されると理解されています(解雇権濫用の法理の準用)。実務では1ヶ月〜6ヶ月程度とする例が多く、あまりに長い期間は合理性を疑われる要因になります。

  • 期間は1〜6ヶ月程度が通例。延長する場合は事由を明確にする
  • 本採用拒否の判断基準を、募集要項や採用時の説明と矛盾させない
  • 適性不足の判断材料(評価メモ、指摘と改善の機会)を記録として残す
  • 試用期間中の待遇を本採用後より下げる場合は、その合理性を説明できるようにする

競業避止条項 — 在職中と退職後で分けて考える

在職中の競業避止は信義則上の付随義務として比較的広く認められる一方、退職後の競業避止は職業選択の自由との緊張関係にあるため、必要性・期間・地域・対象業務・代償措置といった観点から合理的な範囲に限られる傾向があります。文言だけ強くしても実効性は上がらず、むしろ無効な部分を巡る争いの原因になります。退職後に営業秘密を持ち出されることへの対抗策としては、競業避止よりも守秘義務と営業秘密の管理整備が先という考え方が実務では一般的です。営業秘密として保護されるための要件と、それを契約に組み込む方法は、秘密保持契約書(NDA)の書き方の解説で整理しています。

年俸制のポイント

「年俸制だから残業代は不要」という理解は危険です。割増賃金の対象から除外されるのは、管理監督者など限られた場合にとどまります。年俸制を採る場合も、賃金の内訳(基本部分と割増部分の区分)を明示し、労働時間の記録とセットで運用するのが安全です。勤怠と給与の記録運用については、請求・工数・タイムキーピングの管理をAIで行う方法でも触れています。

副業条項 — 一律禁止からの転換

厚生労働省の指針(平成30年の改正)以降、就業時間外の副業を一律に禁止する規定は原則として無効としつつ、労働者の生計や企業の秩序に具体的な支障がある類型に限って制限できるという「モデルケース」方式が標準的な整理とされています。テンプレートの副業条項が「一切の兼業を禁止する」だけになっているなら、書き換え候補です。

  • 競業となる副業は制限し得る旨を定める
  • 情報の持ち出しや顧客勧誘など具体的な支障類型を挙げる
  • 申告(届出)制度と、それを理由とした不利益取扱いの禁止をセットにする

なお、副業の可否とは別に、競業避止・守秘義務・利益相反の三つは整理して置く方が効きます。副業そのものは条件付きで許容しつつ、競業と情報管理を個別の条項で縛る構造にすれば、「禁止規定が丸ごと無効にされた」という最悪の形を避けやすくなります。

締結前チェック表

チェック項目確認内容NG例
賃金の明示決定・計算方法、締切日、支払日を具体的に「当社規程による」のみで終えている
労働時間始業・終業・休憩を明記「フレックス制」の一言だけ
試用期間期間と本採用拒否の考え方1年を超える試用期間
競業避止在職中と退職後を区分退職後も全国・生涯の一括禁止
副業条件付き許容の方式一律禁止のみ
契約期間期間の定めと更新の扱い有期なのに更新の記載なし

就業規則との整合

雇用契約書と就業規則の内容が食い違うと、どちらが優先するかを巡って争いの原因になります。実務では、契約書には個別の条件を置き、共通の労働条件は就業規則を引用して重複を減らす形にします。雇用契約・就業規則の作成をAIで支援する方法、規程全体の整備はコンプライアンス・規程管理のAI活用を参考にしてください。従業員の人事データを外部サービスで処理させる場合は、個人情報取扱委託契約書を別途整える必要もあります。

まとめ

雇用契約書は「書かなければならないこと」(明示義務)と「書くと逆効果になること」(過大な制限条項)の両方を意識すると、ちょうど良い分量が決まります。明示事項の網羅、試用期間と競業避止の合理性、年俸・副業条項の実態一致——この三点をチェック表で確認してから締結してください。それでも紛争になりそうな場面では、労働紛争への対処フローをあらかじめ把握しておくと落ち着いて動けます。

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よくある質問(FAQ)

雇用契約書と労働条件通知書はどちらを使えばよいですか

両者は目的が異なり、排他的な選択ではありません。通知書は明示義務を満たすための簡潔な書面、契約書は個別の取り決めを積み上げる書面です。実務では通知書で明示を満たし、契約書で個別条項を定める併用がよく使われます。

試用期間中に解雇するのは難しいですか

難しいと考えておく方が安全です。試用期間中でも、客観的合理的な理由と社会的相当性を欠く解雇は無効になり得るとの法理が確立しています。適性不足を裏付ける記録を残しておくことが実務上の防御です。

競業避止条項に違約金を設定できますか

設定自体は可能ですが、金額が過大だと全体の効力を疑われたり、懲罰的と評価されたりするリスクがあります。退職後の競業避止はそもそも合理的範囲に限られやすいため、違約金の額と範囲の整合を確認してください。

固定残業代制にすると残業代の計算が不要になりますか

なりません。固定残業代制でも、設定した時間を超える労働には追加の割増賃金が必要です。基礎となる賃金額の明示や、固定部分が割増賃金として充足される額かどうかの検証も求められます。

パート・アルバイトにも雇用契約書が必要ですか

明示義務は雇用形態に関係なく課されます。短時間勤務だからといって口頭だけでは足りず、書面または電子メールなどの方法での明示が必要です。契約書の形式は簡素で構いません。

副業を完全に禁止したいのですが、できませんか

一律禁止は原則無効とされていますが、競業や情報持ち出しのように具体的な支障のある類型は制限し得ると整理されています。「制限する場合」を類型化して列挙する書き方が現在の標準的な設計です。

入社前に契約書を出さず、入社後に郵送しても構いませんか

明示は労働契約の締結時に行うことが求められるため、入社後の後出しは義務違反に当たり得ます。採用内定の時点で条件を提示し、入社日に署名押印まで完了させる流れが安全です。

年俸制の社員にも賃金台帳の作成が必要ですか

必要です。労働時間の記録と賃金台帳の作成は、雇用形態や賃金制度にかかわらず原則として求められます。年俸制は記録を省略する制度ではなく、記録と照らして賃金の適法性を検証するための前提になる制度です。

契約書に守秘義務条項を書く必要はありますか

営業秘密の管理は、守秘条項に加えて、秘密情報の定義や管理手続を定めた別紙・規程とセットにすると実効性が上がります。文言だけあって運用がないと、漏えい時の対処が難しくなります。

退職後の競業避止に代償措置は必須ですか

代償措置の有無は効力判断の一要素とされますが、単独で決まるわけではありません。必要性・期間・地域・対象業務との総合的な均衡で判断される傾向があるため、代償措置だけ厚くして範囲を広げる設計はおすすめできません。

有期雇用の更新を繰り返す場合、契約書はどう扱えばよいですか

条件が同じ更新でも、更新時の意思確認の記録を残すのが安全です。条件変更があれば差し替えが必要ですし、反復更新により無期転換の対象になり得る点にも注意してください。

テンプレートのまま使う場合、どこを必ず修正すべきですか

少なくとも賃金・労働時間の明示部分、契約期間と更新、試用期間の三点は自社の実態に合わせて修正してください。ここが実態とずれたままだと、他の条項の効力にも波及しかねません。

雇用契約書は電子締結できますか

書面による明示義務は、電子メールやPDFの送付など労働者の求めに応じた方法でも満たし得るとされています。電子締結サービスを使う場合は、本人が内容を確認した記録(開封ログや署名)を残す運用をセットにしてください。

試用期間を延長することはできますか

延長自体を禁じる規定はありませんが、延長によって実質的な解雇猶予期間が不当に長引くと合理性を疑われます。延長の事由(適性評価の継続確認が必要な場合など)をあらかじめ契約書か就業規則に定めておくと安心です。

労働条件を後から変更するには何が必要ですか

賃金などの労働条件の変更は、原則として労働者との合意が必要です。不利益変更は特に慎重で、就業規則の変更だけでは足りないとされます。変更の必要性と相当性を説明できる資料を残しておくことが重要です。

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