離婚・親権・相続などの家事事件でAIをどう使うか — 機微情報とAIに代替できない判断
「離婚 AI相談」や「相続 AI」を調べると、結局気になるのは一点です。離婚・親権・相続といった家事事件でAIをどこまで頼ってよいのか。家事事件は財産分与の計算や書式作成のような定型的な作業もありますが、当事者の感情や家族関係の機微に深く関わる判断が中心を占めます。AIは前者の負担を軽くしますが、後者に踏み込むことはできません。
家事事件でAIが得意なこと
AIは、財産分与や養育費・婚姻費用の算定に必要な資料(源泉徴収票、預金通帳の写しなど)を整理し、法定相続分の計算や遺産分割協議書の標準的な条項の下書きを速く作成できます。離婚協議書や調停申立書の定型部分の作成、相続関係を図示するための家系図の整理といった作業でも、時間短縮に役立ちます。
AIには代替できない判断
親権者の指定や面会交流の条件、財産分与の割合修正、遺留分をめぐる感情的対立の調整といった判断は、当事者双方の生活状況・子どもの意思・家族間の力関係など、文書には表れにくい要素を踏まえた人の判断に強く依存します。AIが提示する「標準的な」財産分与割合や養育費の相場は、あくまで統計的な出発点であり、個別の家庭の事情を反映した最終的な主張・合意案は弁護士が組み立てる必要があります。
機微な個人情報の扱い
- 要配慮性の高い情報: 離婚事件ではDV・不貞行為・精神疾患の診断など、極めて機微な事実関係を扱うことが多く、これらの情報の入力先とその管理体制は特に慎重に確認する必要がある。
- 子どもの情報: 親権・面会交流に関する事件では未成年の子どもの生活状況や意向が扱われることがあり、当事者以外への漏えいが子どもの利益を害しかねない。
- 相続人間の利害対立: 相続事件では相続人ごとに利害が対立するため、一方の相続人の情報が他の関係者に意図せず漏れることのないよう、案件ごとにアクセス範囲を管理する必要がある。
入力したデータがどこに保存され、AIの学習に使われないかを制御できないツールは、家事事件ではとりわけリスクが大きくなります。
存在しない裁判例・審判例を引用するリスク
財産分与の割合や養育費の算定基準についてAIに調査させると、実在しない審判例や、実際の事案とは異なる結論をもっともらしく提示することがあります。AIが示した裁判例・審判例は根拠ではなく「確認すべき候補」であり、必ず原典を確認したうえで、当事者への説明や書面への引用に用いる必要があります。
まとめ
離婚・親権・相続といった家事事件でのAI活用は、「資料整理と定型書式の下書きはAI、当事者の感情や家族関係を踏まえた最終判断はAIでは代替できず弁護士に残る」と分けるとき最も安全です。機微な個人情報の管理体制を事前に確認し、AIが示した裁判例・審判例は必ず原典で検証したうえで、依頼者に寄り添った判断を行ってください。